ひとつひとつオーダーメイドで、光計測システムを作っている会社は、おそらく日本でただ1社。分光計器株式会社だけである。 |
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世の中には、技術力を武器にする会社が山ほどある。しかし、今日のナンバーワンが明日もそうである保証はどこにもない。そこではつねに熾烈な競争が繰り広げられているからである。
製品化された技術はすぐに分解され、模範され、そして、価格競争に突入する。そうなれば、技術者への要求の大部分は”今以上に安くするにはどうするか”というコスト削減に集中することになる。そんななか、新しいものをつくりたい欲求と、既存の製品のコスト削減という現実問題のなかで、世の中の技術者たちはジレンマに陥っているのである。
これから紹介する分光計器株式会社も、技術力を武器にした会社である。しかし、同社が置かれている環境は、前述のような一般的なものとは大きく違う。なぜなら、競争相手がほとんどゼロに等しいからである。
1977年の設立以来、日本の市場を独占し続けている”真空紫外分光光度計”という製品が、そんな同社の強みをよく表しているといえるだろう。
真空紫外とは紫外線より短波長の極紫外光のことをいい、その極紫外光は空気中の酸素等により吸収されてしまう。そのため、光源から分光器・測定する試料・そして検出器まで、すべて真空状態で測定する必要がある。そうした測定を可能にしたのがこの”真空紫外分光光度計”で、従来は大学官公庁の研究機関や大手企業の開発部門の特殊な分野で使用されてきた。しかし近年、新たな分野で大きな需要が期待され始めているのである。
たとえば、半導体(IC)は、ステッパーと呼ばれる装置で光によって焼き付けられており、集積度を上げるには短い波長の光を使用しなくてはならない。今までのステッパーに使用される光の波長は可視光や紫外光であったが、高い精度で求められる今日において、この集積度の要求が紫外光よりさらに短い真空紫外光の波長にまできているのである。本来、新しい技術にはそれ専用のツールが必要になるのだが、この光の測定には当社の製品である真空紫外分光光度計がまさに打って付けであり、不可欠なのである。そこには、ステッパー用のレンズの解析や焼付け用の感光剤の開発、あるいはこれらに関連した材料の分析・・・数え上げればきりがないほど。つまり、例えてみれば真空紫外分光光度計を手掛かりに、この新しい世界が支えられていると言っても過言ではないのである。
このような高度な技術力が同社の強みなのであるが、しかしこれだけでは競争相手がいない理由に対する答えとしては十分であるとは言えないだろう。光の分野の技術なら、大手光学機器メーカーが参入してきてもおかしくないからである。
では、なぜそうならないのか。その理由は、これらの製品がすべてオーダーメードだからである。ひとつひとつ仕様の異なる製品を作る場合、スケールメリットを発揮することは不可能である。当然、そこには大手が参入しないニッチ市場が生まれる。
つまり、非常に高い技術力が必要でありながら、大手企業が参入できないという2つのハードルが、同社のナンバーワンの地位を、不動のものにしているのである。
売り上げ数字を追い続けて、大企業になろうとは思わない。誰もマネできない技術分野で生き続けることが、究極の目標。 |
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分光計器株式会社の主力製品である光計測システムは、そもそも家電製品のような消耗品でもない。一度納入されれば、10年でも20年でも、稼働し続けることが可能である。では、一度納入すればビジネスは終わりかといえば、決してそうではない。
たとえば、精密部品分野の技術は進化する一方である。そのなかで。メーカーが他社と差別化した製品をつくるためには、当然ながら、より優れた製造装置を開発しなければならない。しかし、そのためにはより優れた評価装置が必要になってくる。そして、その期待に応えられるのは分光計器をおいて他にはないとなれば、技術が進化する限り、つねに同社に対して新しいニーズが発生し続けることになるのである。
また、光計測システムには、まだまだ潜在的な用途がいくらでもあることがわかっている。分かりやすい例をとれば、紫外線の問題があげられるだろう。従来ならばオゾン層が、波長の短い光線をカットする役割を果たしていた。しかし、その機能が失われたことで、今や有害な光線が地上に降り注ぐようになってしまった。そこで、紫外線をカットする化粧品が開発されたのであるが、開発段階では、どのような物質が紫外線をシャットアウトするのかを探らなければならない。要するに、有害な光線を分けて取り出して、照射することで遮断能力を測定するとき、同社の光計測システムが威力を発揮するというわけである。
さらには、容器をどのような材料で作ればよいかを測定するためにも、同様の理由で使われる。これは化粧品のみならず、食料品なども含め、光線によって物質が変化してしまう可能性のあるもの、すべてに当てはまるのである。
これらの事実から、同社が世の中から求められているのは、より深い専門性の追求と、その利用範囲の裾野を拡大することの2点であることがわかるだろう。
そして、これらの期待に応え、世の中の技術の進化を支えることができるかどうかは、分光計器の技術者一人ひとりの能力にかかっているのである。できれば、その期待の大きさを、肌で感じてみてほしいものである。おそらく、誰もがこの仕事から離れなくなるに違いない。
オンリーワンの技術領域で、ナンバーワンをめざすということは、日本一をめざすことでもある。 |
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理系の大学を卒業し、技術者としての道を歩み始める人は、毎年何万人にものぼる。しかし、そのなかでその道を究めることができる人は、いったい何人いるだろうか。たとえば、大手企業に入社すれば、社内競争に勝ち残るだけでも相当な険しい道だと言わざるを得ない。しかも、ふつうは必ず同業他社が存在することから、社外にも数千人のライバルがいることになる。こういった状況では、そもそもナンバーワンという目標自体を掲げることが可能になってくるだろう。
そんななか、一般の技術者は、まず所属しているチームの中で、一番優秀な業績をおさめようと必死になる。なぜなら、そうしなければ新しいことにチャレンジするチャンスなど、一生巡ってこないからである。
もちろん、そういう道をあえて選択するのもいいだろう。しかし、その一方には、分光計器のようなオンリーワンの技術力をもった会社でナンバーワンをめざすという道もある。ライバルは、専門特化した強者ぞろいであるものの、その数は数十人である。しかも、次世代を担う世代ともなれば、もっとその数は減ってくるだろう。持てる能力をつねに高め、技術を磨き続け、真の意味で実力が伴ってくれば、運、不運関係なく、ナンバーワン技術者になることができる。そして、この技術領域においてナンバーワンであるということは、すなわち国内トップの権威であることと同じなのである。
はじめは基礎をじっくり学ぶことから始めなければならないのは、どこも同じである。しかし、大組織では、一人ひとりの技術者を、その個性に応じて育成することは不可能である。どうしても画一的にならざるを得ない。
その点、同社の場合は、4年から5年という比較的長い時間をかけて、技術者をじっくり育成していく方針であるという。画一的ではなく、逆に個性を伸ばすことに重きを置いているのが特長で、何でも先輩の言う通りではなく、自ら技術領域を創造していく、そんな積極性が求められる。同社がいま求めているのは、あくまでも将来の分光計器を担う中核人材であって、単なる人手ではないのである。
また、光学関係という特殊な領域であることから、出身学部を問わないのも特長のひとつであると言える。物理、化学、電気・電子、いずれの分野もその人のコア領域として活かすことができる。その上に、光学に関する専門知識を築いていけばいいのである。
もっとも重要なのは、意欲である。それさえあれば、たとえはじめは門外漢であろうとも、あなたが日本一になる可能性は決して低くない。ここには、そのチャンスがいくらでも転がっているのである。